【改憲】基本的人権の尊重は、なぜ削除されるのか?

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本日は、「自民党が『基本的人権の尊重』をどう変えたいのか?」について、学びなおし。

2022年7月10日に行われた参議院選挙、結果は自民党の単独圧倒となりました。

そして、ここから「改憲」の動きが加速していくものと思われます。

とりわけ注目されているのが、「基本的人権の尊重を削除する」と言われているところです。

資料として、自民党の日本国憲法改正草案をあげておきます。
今回の話題としている箇所は、資料27ページ(本文26ページ目)の下の段・憲法第97条のところです。
(※無断転載ができないため、各自でご確認ください)

以下の部分を、自民党は削除するとしています。

この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

では、なぜ自民党はここを削る必要があると考えているのでしょうか?

その言い分をまずは知っておきましょう。

憲法第11条と被るから、不要?

7月10日の選挙直前、自民党は4つの「変えたい」こと自民党の提案という資料を公開しています。

それによると、「基本的人権の尊重は変えません!」と言っていますね。

結局、変えるのか変えないのか……ここに戸惑っていらっしゃる人が多いようです。

そこで、もっと詳しい解説が載っている日本国憲法改正草案 Q&A(増補版)43ページ(本文37ページ、Q44から)を見てみましょう。

要するに「憲法第11条と内容的に重複している」という理由で97条は削除するのだそうです。
そして11条は現代版アレンジを加えるのみに留めることで「憲法の基本的人権の尊重は守る!」と言いたい訳ですね。

では、次に憲法第11条とはどんな内容なのかを抑えておきましょう。

国民は、全ての基本的人権を享有(きょうゆう)する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。

ちなみに自民党は、日本国憲法改正草案も下のようにアレンジしようとしています。

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる

確かに……とも捉えられるかもしれませんが、ちょっと待ってくださいね。

97条と11条だけを見てしまうと確かに被っているのですが、憲法は章全体の流れで読み解かなくてはいけません!

11条と97条が示す「基本的人権の尊重」の違い

第11条は憲法全体の第3章にあります。第3章は「国民の権利及び義務」について記載されているところです。

第3章の内容をわかりやすく一言で表現するなら、「国民は法のもとで平等であり、天皇の家臣ではないし、身分で差別されるものではない」ということを明記しているところです。

一方、第97条は第10章「最高法規」にあります。

第10章を一言で表現するなら、「憲法とはどういう存在か?」を明記しているところです。

第98条に「この憲法は、国の最高法規あつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」とある通り、憲法が国の最高判断基準なのであって、その範囲内で第3章の「基本的人権の尊重」などが保障されています。

11条と97条は、基本的人権の尊重について記載しているという点では同じでも、その目的や効力の範囲がまったく違うのです。

だから……被ってないです! よく見直すと、憲法第11条と第97条は目的・効力の範囲が異なるという点で重複していないのです!!

憲法第97条が削除されたら「基本的人権の尊重」は失われる可能性大

第10章に「基本的人権の尊重」がある大きな意義は、「憲法は国民の基本的人権を侵してはならない」という大原則をはっきりさせることでした。

それが削除されてしまうということは、憲法そのものの在り方を根本的に変えてしまうということに他なりません。

今回の選挙で自民党が圧勝したことにより、憲法改正の色は濃厚となってしまいました。

ただし、びくびくしたり怒ってばかりでは楽しい暮らしに水を差すだけです。

こんな時代の中でどう賢く・楽しく・できるだけ豊かに暮らしていけるのかを、これからもブログなどを通じて発信していこうと思います。

(今回の改憲だって、そうせざるを得ない背景や理由はあるのですから。詳しくはサブスク記事でお伝えしております)

引き続きよろしくお願いいたします。

では、また次回!

参考リンク

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