本日は、「高額療養費制度が修正されるとどうなるか、私たちはどんな備えをすべきか」について学びなおし。
政府は、今年8月から高額療養費制度の負担上限額を引き上げると発表しました。月々の医療費負担が高額になった場合の、私たちの負担が「増える」ということです。
具体的にどれくらい増えるかを以下の図にまとめてみました。(※細かい計算は割愛しています。おおよその目安としてご覧ください)
住民税非課税 | 35,400円 | 36,300円(900円増) |
~約370万円 | 57,600円 | 60,600円(3,000円増) |
約370~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 約88,200円(約8,000円増) |
約770~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 約188,400円(約2万円増) |
約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 約290,400円(約4万円増) |
高所得者ほど高額医療となった場合の負担が増える見込みです。
さらに、来年から再来年にかけても年収の区分をさらに細かくし、段階的に上限額を引き上げることになっているのです……。
なぜ、引き上げられるのか?
今回の修正の理由について、政府は以下のように発表しています。
- 高齢者の増加による医療費の増加をまかなうため
- 医療の発達により、高額な医療技術や投薬を利用する人が増加し、医療保険の財政が悪化している
たしかに、いくら政府のお金のやりくりに不満があると言っても、厚生労働省「令和5年度 医療費の動向」を見ると、近年の高齢化や先進技術の導入によって医療費が切迫していることは事実のようです。
参考資料:厚生労働省「令和5年度 医療費の動向」
現在の高額療養費制度、利用率は?
では、実際にこの高額療養費制度を年間どれくらいの人が利用しているのでしょうか?
厚生労働省の「高額療養費制度の概況」によると、令4年度(2022年)の支給件数は約1,421万件。総務省統計局による日本の総人口(2022年時点)は約1億2,495万人。単純計算すると、令和4年度(2022年)は、年間で国内の約11.4%が利用していることになります。(※ただし、1人が複数回利用するケースが多いため、実際の利用者割合はもっと思われます)
参考資料:
・厚生労働省「高額療養費制度の概況(令和4年度)」
・総務省統計局「人口推計(令和4年)」
ちなみに私は、第二子出産前に長期の入院が必要になり高額療養費制度を利用しました。
高額療養費制度は、若年層より高齢者の利用が多いのはもちろんなのですが、妊娠・出産その他、急な病などで若年層でも利用者になる可能性は大いにあるのです。
複数の課題
いくら医療の財源が必要と言っても、高額療養費制度の上限を引き上げるには複数の課題が残っています。
- 長期療養が必要な人には、チリツモで大きな負担となる
- そもそも長期療養が必要な人は、安定職に就けず低所得なことが多い
- 受診を控える患者が増えれば、過疎地域などでの病院経営が厳しくなり、地方の医療体制が弱体化する懸念がある
これからある程度の対策はされるのだと思いますが、特に地方の医療体制の弱体化が顕著になる気がします。高齢者ばかりで人工透析などを必要とする患者が多い地方は、足りない医療費を自治体がカバーせざるを得ず、さらに運営維持が大変になるでしょう。
現役世代が今できること
以上のことを踏まえて、主に現役世代ができることを考えてみました。
- そもそも大きな病気にならないよう健康維持に努める
- 安定した収入を確保し、急な医療費の発生に備える
- 民間の医療保険・がん保険を見直す
- 会社や自治体の補助制度について正しく理解し、有効活用する
医療が発達して長生きできるようになった一方で、医療費高騰や長期療養に備える必要があります。
でも、そんなに長くは続かないと予想
高額療養費制度の引き上げは該当者にとっては大きな負担であり、問題です。
しかし、長期的に続くかと言えば……そうとは言い切れないと私は思っています。